夕方になると畑に行く。3種類植えたトマト、ナス、インゲン、ピーマンなどを収穫する。トマトは収穫後、ソース用、サラダ用、保存用といろいろに分けてお客さん用の一番涼しい部屋に並べておく。するとだんだん熟してますます赤くておいしそうになる。並べながら何を作ろうか考えるのがとても楽しい。
イタリアでは夏野菜の種類はあまり多いとは言えない。上に書いた5種類とサラダ類が主な野菜だ。しかし各野菜のレシピの多いことと言ったらない。地中海一帯は皆そうなのだろうが、主役になる野菜の一品がすばらしくおいしい。肉やチーズ、魚介類との組み合せも抜群によい。
今日はサラダ用の大きいトマトがたくさん採れたので、パンツァネッラを作ることにした。これは夫が小さい頃、戦後貧しい時によく食べたものだそうだ。作り方はいたって簡単。
固くなって包丁も入らなくなったパンを水につけてほぐす(こちらのパンはカビが生えにくくておもしろい。それもあって乾燥して固いパンが好まれる)。水気を切ってパンと同量のトマトを一口大に切って混ぜる。オリーブオイル、ワインビネガー、塩、バジリコ、オレガノなどを入れて味を整える。夫いわく、ついでに幼児期の思い出もいれる。
パンを水にひたしてグチャグチャにするなんて、はっきり言ってニワトリのエサか鯉のエサのようだと思うが、味はとてもおいしい。さっぱりしているし、パンはやわらかいしたくさん食べられる。
食べ終わった後に夫にすごくおいしいけど、ニワトリのエサみたいね、と言ったらハッハッハと笑っていたけど、ちょっとショックを受けたようだった。日本人が麦茶を冷やご飯にかけて食べるのと同じようなものかと言ったら、パンツァネッラはおいしいトマトが入っていて栄養もよいと反論された。
今日子 |