ウンブリアには海がない。そのおかげというか、海に大量に押しよせてくる観光客がいなく、景観がそこなわれていない。海があると、周りにペカペカしたホテルやレストラン、行楽施設が並び、ガチャガチャして街が荒れてしまいがちだが、それがない。ウンブリアに拠点を移す人は、そういったガチャガチャはもう十分味わって静かにしたい人々が多い。トスカーナの田舎のように、完璧にきれいで、人の手が入り込み、住んでいる人も"トスカーナ"に住んでいることを誇りに思っている人とは少し違う。もっと素朴な雰囲気がある。ウンブリアの観光地で有名なペルージャ、アッシジよりやや小さい街の、トーディ、スポレート、トレーヴィ、などはすばらしい。トーディは何年か前にアメリカの大学の調査で、世界一住みやすい街というデータがでたところだ。住みやすいというのは、自然環境、病院や公共施設、食べ物、などを総合で調査してでたものだ。落ち着いた中世の街並みが残り、おいしいものも多く、お金儲けのためだけのお土産屋も少ない。小さくてかわいらしいホテルやおいしいレストランなどがたくさんあり、本当の意味で観光地として成功している。さらに小さな街でも、美しく、そして住み心地が良い。生活は派手ではないが、自然に恵まれて豊かなのだろう。人々の気持ちが荒んでいない。
今年のイタリアワインは、最もおいしいワインにアルナルド・カプライという、ウンブリア州・トレーヴィ近くのワイナリーのワインが選ばれた。ここにはおいしいレストランとホテルがあり、会社はレース編みの会社として500年の歴史がある(前に私がテーブルセッティングの受講に行ったところだ)。他にモンテファルコのワインも質が良くて名が知れている。
そしてオリーブオイル、これもオリーブオイルを生産している州の中では一番生産量が少ないが、一番"質が良い"と専門家が言う。質が良いと言うのは酸度が低いとか科学的なこともあるけれど、ようするにおいしいのだ。うちの周りのオリーブオイルは、さしずめ魚沼産こしひかりと言ったところだろうか。
子供が生まれる前、よく夫と自転車旅行をしていたのだが、ウンブリアを北から南までこまかくまわってみた。自転車だと、車や電車と違って疲れたら次の村までたどり着けないため、思いもよらない所で寝泊まりをすることになる。これがまた面白い。こんな所にホテルがあったのかと思うような場所を見つけるのがとても楽しかった。1日に60キロから、多い時で80キロも走る。
今住んでいる所はそうやって見つけた所だ。どこまでも続く丘と麦畑にオリーブ畑があまりにきれいだったので、自転車で走りながら「この辺りに住みたい!」という一言で家探しが始まったのだ。イタリアでの家探しの話はまた今度ぜひ。
今日子 |